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外国特許事務と英語について

「外国特許事務」というと、その業務内容はよく知らなくても、「英語を使う仕事」という漠然としたイメージがわくと思います。
けれども実際にどのような場面でどのように英語を使うのかは、あまり知られていないのではないでしょうか。
「外国特許事務」とは?コラム内(2025/04/07 知財トピックス)でも簡単にご紹介しましたが、今回は英語を使うシーンについて、当事務所のケースをもう少し掘り下げていきます。

外国特許事務の業務の中で、一番英語を使う場面は、やはり、海外の代理人とのやりとりです。
電話で話すことは滅多になく、レターやメールなど、文章上のやりとりがメインとなります。
特許にかかわる仕事は、法律を扱うということもあり、文章として固いビジネス英語の使用が多く、また、特許や法律にかかわる用語が頻繁に出てきます。そのため、まったく馴染みも予備知識もなく海外代理人のレターを読んでも、分からないところがたくさんあるでしょう。

例えば、

General Power of Attorney

IDS (Information Disclosure Statement)

Terminal Disclaimer

Notice of Allowance

このような用語は、一般的な英文レターではほとんど出てこないのではないでしょうか。ビジネスレターの書き方の本を見ても、おそらく、法律・契約や特許に特化したものでなければ、なかなか載っていないと思います。

上記の日本語は、

包括委任状

情報開示陳述書

ターミナル・ディスクレーマー(特許権存続期間の部分放棄宣言)

許可通知(登録査定)

となります。

これらの日本語を聞いて、「あ、そうか、なるほど」となるのは、法律や特許について多少なりとも知識がある方でしょう。
そうです、特許事務の業務の中に出てくる英語は、日本語で聞いても「どういう意味?」となることが多いのです。
事務は、特許法について弁理士のように細かく熟知しているわけではありませんが、海外の代理人とやりとりするにあたって、内容を理解するには、こうした用語の意味を知っている必要があります。そして、このように固い用語を使うには、全体的な文章も、固くフォーマルな形にするほうが自然です。
とはいえ、フォーマルさにこだわりすぎて、文章が入り組んでしまうと、伝えたいことが伝わりづらくなってしまうので、冗長にならず、きちんと意味が伝わるように考えて文章を作成します。
多くのやりとりは定型文に沿ったものになりますが、滅多に発生しないイレギュラーな事例が生じた場合、出願人(お客様)から特別な要望や質問を受けた場合、出願経験のない国への手続きについて確認が必要な場合など、その都度文章を考えていくことももちろん少なくありません。
急ぎの要件も多く、迅速に海外代理人からのレターの内容を理解したり、こちらからの要望や問合せ内容を簡潔に伝えたりと、スムーズなやりとりができる英語力が必要です。

他に英語を使う場面として、出願に必要な書類、例えばサイン書類の翻訳があります。
英語で書かれたサイン書類を、お客様(出願人・発明者)にそのまま送付すると、内容が曖昧なままサインされることがあるかもしれません。後々、「こんな内容ならサインしたくなかった」というようなトラブルが発生しないよう、日本語訳を一緒に提供することが望ましいです。
サイン書類は特許庁に提出する公式文書で、内容も複雑です。法律関係の独特の言い回しもあり、誤解が生じないように慎重に翻訳しなければなりません。
サイン書類の他にも、基礎となる出願(多くは国際出願や日本出願)の願書や、出願人の登記簿謄本といった書類の英文翻訳が必要な場合は、事務が準備をしていきます。
こうした書類は、前述したような、一般的には使われない用語や言い回しも多く、また、公的文書ですから数字一つをとっても、誤りが無いよう、注意して翻訳します。

また、特許明細書の英文翻訳をチェックする場面もあります。特許明細書の内容は専門家でないと中々理解できず、何十ページにも及ぶ技術的内容は、日本語で読むのも難しいもの。精査するには当然時間がかかります。
そのような細かいところは、専門知識のある技術担当者や翻訳担当者が注意を払って行っていきます。
ですから、事務では最終的なスペルチェック、句読点や改行などの形式チェックといったところや、「違和感の有無」を短時間で大まかにみていくことがメインです。
いろいろな英文明細書をいくつも見ていると、内容はわからなくても、ここはこれでいいのかな?といった違和感を覚えることがあります。例えていうなら、リンゴの山の中に、ひとつだけイチゴが混ざっているのに気づくような感じです。リンゴの品種も原産地も、詳しいことは分からないけれど、同じ赤い果物でも、何か違うものがある…と目に入るのです。
余談ですが、四つ葉のクローバーを探すのが得意な人は、三つ葉の中に四つ葉があるのを発見するとき、そのように見えるそうです。人間の目(脳?)とは不思議なものですね。

以上、外国特許事務が英語を使う代表的な場面を、3つご紹介いたしました。

最近はAIの進歩により、AIが簡単に英文を作成してくれたり、日本語に訳してくれたりします。それはとても便利ではありますが、特許の分野についてはまだ知識が集積されていないところも多いようで、AIの力を借りるにしても、今のところはやはり人間がその内容を確認して、誤りがあれば修正していく必要があります。
便利なものは活用しつつ、人間こそが持つ能力を働かせて仕上げていく。外国特許事務が英語を使う場面でも、そんな風に事務の力が発揮されています。

 

 

 

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