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外国特許出願と審査請求管理

特許は、出願しただけで認められるものではありません。出願したその内容を特許庁に審査してもらう必要があります。
審査をしてもらうための手続きは「審査請求」と言い、審査請求の管理は、特許出願にかかわる期限管理の中で重要なもののひとつです。

なお、審査には「方式審査」と「実体審査」があり、通常「審査請求」と言えば、実体審査の請求のほうを指します。
方式審査は、願書の記載に不備がないか、明細書や図面がそろっているか、その形式が整っているか、といった、形式的な要件を満たしているかどうかの審査で、通常、請求をせずとも、出願後に特許庁にて行われます。不備があった場合は、補正指令が出されるので、その指令に従って、補正をすることになります。
そして方式審査に合格すると、発明の内容を審査する、実体審査にうつることができます。
アメリカのように、審査請求制度がなく、請求しなくても実体審査に入る国もありますが、ほとんどの主要国では、請求を行った出願のみ、実体審査が実施されます。

審査請求の期限は、日本の場合は出願日から3年以内ですが、海外の場合はどうでしょうか。

韓国は日本と同様、出願日から3年以内。
中国は出願日から3年以内、優先権主張がある場合は優先日から3年以内となります。
インドは出願日から31か月以内、優先権主張がある場合は優先日から31か月以内。
ヨーロッパの国ですと、例えばドイツは出願日から7年以内、ロシアは出願日から3年以内となります。
オーストラリアは出願日から5年以内ですが、特許庁から審査請求指令を受けた場合は、指令日から2か月または出願日から5年以内のどちらか早いほうが期限となります。

このように「出願日(または優先日)から〇年以内」ということが多いですが、起算日が別の日になる国もあります。
例えば、タイは出願公開日から5年以内、フィリピンは出願公開日から6か月以内、トルコは調査報告書(サーチレポート)の通知から3か月以内、といった具合です。
なおイギリスは、出願日から12か月以内に調査請求、出願公開日から6か月以内に審査請求、となっています。

EPの場合は複数のパターンがあります。
欧州調査報告書の公開日から6ヶ月以内、Euro-PCT出願(欧州特許条約に基づいて欧州特許庁に提出されるPCT出願)の場合は優先日から31か月以内、国際調査機関がEPO(欧州特許庁)の場合は、国際調査報告の公開から6か月または優先日から31か月以内のどちらか遅いほうが期限となります。

また、海外の審査請求制度には、審査ルートを選択できるものがあります。
そのような制度を持つ国として、マレーシアとシンガポールの例を以下にご紹介します。

マレーシア

マレーシアの審査請求制度の特徴は、「実体審査請求」と「修正実体審査請求」があるところです。
修正実体審査とは、出願国以外の国の審査結果に基づき、審査を行う制度です。
マレーシアの場合は、対応出願国に、日本、韓国、アメリカ、EP、イギリス、オーストラリアのどれかがあり、すでに特許登録となっている場合、その国の出願情報をマレーシア特許庁に提供することで、この制度を利用できます。
請求期限は、実体審査請求も、修正実体審査請求も、ともに出願日から18か月以内となります。
上記の対応国の出願が有るときは、それらの国での審査経過を見ながらマレーシアでの審査請求について検討することができ、期限の延長も可能です。

シンガポール

シンガポールの場合、「調査請求」と「審査請求」を別々にすることができるのが特徴です。
以下の3つから選択します。
1.先に調査請求をしてから、のちに審査請求をする。
2.調査請求と審査請求を同時にする。
3.対応他国の調査結果に基づくシンガポールでの審査を請求する。

このなかで3.の対応他国とは、日本、韓国、アメリカ、EP、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、そしてPCT出願となります。
例えばPCT出願の国内移行としてシンガポールに出願する場合、国際調査報告書を基にした審査の請求をすることができます。
また、シンガポールでも、期限の延長が可能です。
審査請求期限は、上記1~3のいずれも、出願日または優先日から36か月以内となります。

どの審査ルートを選択するのが良いかは、対応他国の状況によっても変わるので、マレーシアやシンガポールは、出願と同時には審査請求をしないケースも多くなります。

このように、審査請求の期限は国によってさまざまです。各国の特許法にしたがいながら、いつ審査請求をするのが最適か、そしてルートの選択肢がある場合はどのルートが最適か、ということを、弁理士がお客様(出願人)にアドバイスしながら検討していきます。

期限内に出願審査請求がされないと、その特許出願は放棄とみなされてしまいます。必要な出願が取り下げられてしまわないよう、きさ特許商標事務所では、現地代理人と連携して確実に管理を行っております。

*掲載時(2025年8月時点)の情報です。各国の制度は改正される場合があるので、最新の情報についてはお問い合わせください。

 

 

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