NEWS & TOPICSNEWS・知財トピックス
2025/10/27
知財トピックス外内特許事務~海外のお客様と日本の特許庁をつなぐ~
以前『「外国特許事務」とは?』のコラムで、「外国のお客様と日本の特許庁をつなぐ業務もある」ことに触れました。
今回はその「外国のお客様と日本の特許庁をつなぐ業務」を行う、「外内特許事務」について、当事務所の場合を例にご紹介いたします。
これまでのコラムでご紹介した「外国特許事務」の業務は、「内外特許」と呼ばれる出願に関するものになります。
内(日本)から外(海外)への出願ということで「内外」となりますから、「外内」は、外(海外)から内(日本)への出願ということになります。
『「外国特許事務」とは?』のコラムで、国内事務と外国事務(内外)の手続きの流れを図で比較しましたが、今回は外国事務の、内外と外内の手続きの流れを比べて、図1に示します。
図1のように、内外では「日本の出願人が海外へ特許を申請する」ことを日本の特許事務所が仲介する形なのに対して、外内では「海外の出願人が日本へ特許を申請する」ことを仲介します。

つまり、内外特許で、わたしたち日本の特許事務所が海外の代理人に最新情報を問い合わせたり、海外の特許庁への提出を依頼したりしているところを、外内特許では「海外のクライアント(代理人又は出願人)から日本における特許出願について質問される側」「日本の特許庁へ手続きを依頼される側」となるわけです。
日本の出願に関して海外クライアントから質問があればそれに答え、見積もりの依頼があればそれに応じる。とにかくすべての面で、内外特許とは立場が逆になります。国内特許事務が、日本の出願人と日本特許庁の間に入って業務を行っているところ、外内担当の外国事務は、海外クライアントと日本特許庁の間に入って業務を行っている、と言ったほうがわかりやすいかもしれません。
では、国内特許事務と全く同様のことを行い、報告先が海外のクライアントになるのでそこで英語を使う、というだけなのかというと、そうではありません。日本の特許出願は、日本語で行う必要があります。海外の特許出願をもとに日本に出願する場合、もとの明細書は外国語で書かれているので、必ず日本語への翻訳が必要になります。その翻訳は、日本の特許事務所が準備するのが一般的です。内外特許出願で、日本と特許事務所が日本語から英訳された明細書を海外代理人に送り、海外代理人がその国の言語に翻訳しているところを、外内は逆の流れで請け負うのです。
海外から日本への特許出願は、ほとんどがPCT出願の国内移行か、パリ優先権主張出願となりますが、いずれの場合も、日本への出願と同時に日本語に翻訳された明細書を提出しても良いし、翻訳文を後から提出することも可能です。
出願の依頼を受けたときに、出願期限までどのくらいの期間があるかによってどちらにするかを決め、それぞれに沿って期限管理していきます。
国内のクライアントの日本特許出願と違う点として、外内の場合は、海外の発明者や出願人について、外国語の名前や住所を日本語に置き換えるという作業もあります。
文字情報だけで送られてくる見慣れない海外の人名・地名…。それを、原語の表音どおりのカタカナに直す必要があるのです。住所の書き方の順番も変わってきます。最近は、ネット検索やAIの活用で、わりとすぐに調べられますが、それでも、それが本当に間違っていないか?は事務が最終的に判断していくので、慎重に調べる必要があります。
また、国内のクライアントの日本特許出願では通常、日本特許庁への出願が最初の出願(基礎出願)となるので、出願期限は出願人の決めた期限となります。一方、基礎出願がすでにされている状態で日本に特許を出願となると、PCT出願なら移行期限が、パリ優先権主張出願ならその優先権主張期限が決められているので、その期限を厳守する必要があります。
出願後、拒絶理由通知が発行された場合、国内出願(日本の出願人)の場合は、応答期限は60日ですが、外内出願(海外の出願人)の場合は、3カ月と長くなります。これは、海外への通信や翻訳の準備などを考慮して日本特許庁が定めているものです。
ですが、審査請求期限や特許査定の応答期限については、国内出願と同じになります。
こうした期限の相違点にも注意が必要です。
また、特許登録後は、特許権を維持するために毎年「年金」を納付する必要があります。外内案件の年金の管理は、海外の年金管理専門会社や特許権利者自身が行う場合を除き、日本の特許事務所が担います。そのため、登録後も長期にわたりお付き合いが続くことが多いです。
各国の違いを把握しておくという内外特許事務と違い、外内特許事務は日本に限定されます。けれども、日本の特許法や手続きについて海外から「頼られる側」となるわけですから、責任重大です。
海外のクライアント側の指示がギリギリになることも多く、迅速かつ臨機応変な対応が必要となります。
もちろん、出願や庁通知の報告、そしてこうした質問に対して、海外代理人へ英語で連絡していくので英語力は必須です。
以上、簡単にではありますが「外内特許事務」について、ご説明しました。
外内特許出願については、
「きさ 所内座談会」の「外内特許座談会」でも、ご紹介しておりますので、ぜひご参照ください。
CONTACT
知的財産に関する些細な相談から
専門的なサポートまで
有益なサービスをお届けします。
お気軽にお問い合わせください。
相談は無料です!